Tomohiko Sugino

修作 Ⅰ – マリンバの肖像 Ⅰ –

for Mar. and Max (2022)

 下のグラフ(黒線)は、僕の聴こえを表すオージオグラムである。縦軸のデジベル(db)は音の大きさを、横軸は音の周波数、つまり音の高さを表している。
 人の聴こえは、周波数帯域ごとにどのような大きさで聴こえるかという結果によって測定できる。グラフの赤線が示す、健常者(20代)の聴こえと、黒線が示す僕の聴こえには明らかな差がある。
 本作は、前半のフィルター形成部と後半のフィルター変調部からなる、2部形式の曲である。前半のフィルター形成部では、マリンバの演奏を素材に、僕自身が舞台上で聴力検査を行い、僕の聴こえによる、音の周波数をコンピューターに入力することで、僕自身の聴こえをシュミレーションするフィルター、“杉野フィルター”を形成する。後半の変調部では、マリンバの演奏と同時に、前半で形成されたフィルターを通して変調した音が1小節遅れて流れる。

初演:2023年 個展「聴常現象 Vol.1」
Mar.:狩野将輝 Max/Msp:杉野智彦