クオリアの聴跡Ⅰ
for Chamber Orchestra (2021)
難聴というものは音の強さや可聴域が悪化しているのみだととらわれがちであるが、問題は単純ではない。私の場合さらに音に歪みやくぐもりがある。 メガネで視力が矯正されるように、補聴器によってそれらの問題は多少改善される。このように補聴器の着脱により1つの音に対し、2つの聴こえが私には存在するのだ。
連作「1/2の聴常現象」では聴こえの差異に焦点を置いている。
今作では音の反響をテーマに電子音響と器楽合奏を用いて作曲した。
曲中では、①録音された環境音。②それ私の聴覚を模したフィルターを通した音。③それらを組み合わせた音の3種類の電子音響が使われている。器楽合奏は、電子音響を受けて次第に変化していく。
初演:第53回 愛知県立芸術大学卒業演奏会
Fl.:石垣 みどり Ob.:国崎 祐未 Cl.:土井 春華 Perc.:狩野 将輝 北条 拓夢
Vln.:井上 春花 山田 貴子 Vla.:大木 美稀子 Vc.:窪田 翔椰 Cond.:杉野 智彦