2023/12/20
右耳の補聴器が壊れた。
これも何かの縁だと思った。2023年11月、僕はCREATIVE HACK AWARD 2023のファイナリストに選出されていた。WIRED JAPANが毎年主催する、「よくわからない……けど、なんだかおもしろそう」「ぜんぜん空気を呼んでないけど、大切なところを掴んでそう」といった作品に、スポットライトを当てることを主旨としたコンペティションだ。応募の年齢は自由、表現の方法も自由。ただし、「なにを」「なぜ」「いかに」ハックするのかを明記した上で応募する必要がある。
補聴器が壊れたのは、このコンペのファイナリストとしてのプレゼンがある日の朝だった。
僕は、正直ファイナリストに選ばれるとさえ思ってなかった。通ったことさえ奇跡だと思う。ファイナリスト選出メールが来た時も、大学のスタジオで大声で「えぇ!?!?×3」と叫んでいたほどである。(大抵の場合は、「おっ!」とか、心の中でガッツポーズしている。)何なら、この作品はお蔵入りにしようか迷っていたレベルである。
結論。ファイナリスト止まりで賞は貰えなかった。半分そんな気もしていた。なぜなら、僕の作品は「人生を通して聴こえのわからなさをハックし続ける宣言をする」作品だったからだ。作品の概要はこうだ。
「僕は難聴である。しかし、障害者手帳が発行されないレベルの難聴者である。そんな僕は補聴器を使用することで、ほぼ健常者として生きてきた。僕が制作する多くの作品は、補聴器を使用した生活の中で作られている。(…もちろん意識的に外して音を比較する場合もある。)だからこそ補聴器を使用することをやめて、一度難聴者として難聴者の聴こえを体感し、それを制作に活かさなければいけない。そのために、現在使用してい補聴器が壊れたら、補聴器の使用をやめる。」といった具合である。タイトルは「脱健常者宣言」。補聴器の耐用年数がおよそ5年、現在5年目なので、ちょうど節目の年である。ただし、コンペの趣旨とする「ハック」をしているかというと完全にしきれていない。
ファイナリストに残った僕の作品に、何らかの賞がついていたら慢心していたかもしれない。ファイナリストに選ばれていなかったら、この作品は本当にお蔵入りしていたかもしれない。だから僕はこれがとても僕に相応しく、とても良い結果だと思っている。
さて、今後の話をする。宣言通り、僕は補聴器を直さない。補聴器は現在、すべての機能が使えるものの、スピーカーの調子が悪く、音があまりよく聴こえない。補聴器ですら難聴になったような感じだ。場所によっては、補助的に使ってもいいくらいだろう。
僕は目先に、フィンランドへの留学を控えている。きっと聴こえないと困ることもある。けれどこれでいい。僕は、難聴者なのだから。
CREATIVE HACK AWARDは、日本から帰国した年にリベンジする。その頃には、両耳ともに難聴者になっていろいろ困ることも増えているだろう。でも、作品もたくさんできているはずだ。そのためのレパートリーをまとめたサイトをこれから作る。この日記は、この作品群のスタートとなる。