Tomohiko Sugino

2024/09/15

 フィンランドでの留学生活の約半分が終わった5月。大学もいよいよ夏休みの休暇に入った頃、僕はダムタイプが隣のエストニアで公演することを知ってすぐにチケットを予約した。そしてその公演の3日前、僕はヨーロッパを一周することを(ほぼ)決意した。ヨーロッパ1周については、僕のインスタグラムやYouTubeをみていただくとして、(17ヵ国32都市、2ヶ月と2週間の旅になった。)今回は、ヨーロッパ1周しながら行ったライブでの発見についてまとめた。

 ヨーロッパ1周を始める1日前、つまりフィンランドからエストニアに向かう船に乗る前に僕は、FaceBookのモジュラーシンセサイザーのコミュニティーにヨーロッパを巡ること、そしてどこかでライブができないか書き込んだ結果、思わず多くの人からの反応があって多くの箇所でライブすることができた。ヨーロッパのライブハウスには様々な特徴があって、それぞれ響き方も変わっていた。例えば、ベルリンのバーに付属するライブハウスでは簡易的なステレオスピーカーやドラムミキサーによって成り立っていたし、イタリアのライブハウスは遺跡の中にあるような特殊な作りになっていた。イギリスでもやはりバーが付属している他にピンボールマシンの数々が陳列されていた。(それぞれの写真については、リンク先のInstagramを参照。)日本のほとんどのライブハウスは、音楽を演奏するのに特化したサウンドシステムが多いのに対して、海外は人々が楽しむ上でのライブハウスというのが多い印象である。したがって、演奏する人は会場費がかからないことがほとんどで、気軽にライブができると聞いた。(日本にもこういう箇所が増えて欲しいと切に感じる。)その中でも特に反省が多かったのは、2回目のベルリンのライブハウスとフィンランドに帰国してから行ったライブである。

 まず2回目のベルリンでのライブは、セルフDIYしたバーの上に設置されたスペースで行う特殊な環境だった。すなわちバーの真上に演奏箇所があり、中2階のようになっているのだ。スピーカーは、その演奏スペースから客席側に向けられていて、自身が聴くための返しのスピーカーはなかった。本番前の軽いサウンドチェックでは特に音が割れそうな箇所のチェックを重点的にした。つまり、音量が小さい箇所のチェックを怠ったのがまず1つ目の僕の反省である。そして、面白いことに実際にライブを終えたあと、オーディオインターフェイスから直接録音したもの、会場客席で録音したものを比較した際聞こえ方が全く異なった。僕の思い違いでなければ、本番中に僕が意図して鳴らしてない高音さえなっていた。つまり僕の可聴域を超えてなっていた音があるということである。その後の演奏では常にパソコンでイコライザーなどを通してなっている音が大まかにあっているのかを必ずチェックしながら演奏するようになった。

 フィンランドに帰国後に行われたライブは、できたばかりのMusic and Art カフェで、天井に8つのジェネレックスピーカーを備えた立派なものだった。演奏スペースも立派な照明付きだ。ただし、スピーカの設置方法は少し独特で、長方形の部屋の四隅に1つずつと中央に4つ、隅にある対角のスピーカーに向けられて設置されている。すなわち、会場の中央のボリュームはとても大きく、とても響きやすい箇所になっているが、自分が演奏する箇所には音が大変届きにくくなっていた。また、演奏前にサウンドをチェックするための時間があまりなく(というのも、常にお客さんがいる上に、常に音楽が流れているため、自分の音をチェックすることができなかったのだ。本番の演奏でも鳴っているか不安になる箇所があり、時折ヘッドホンを使用してサウンドをチェックしたが、ヘッドホンの音、会場の音、自分のなっているイメージの音が混乱し調整に戸惑った。

音が聞こえにくいが故に起こるライブ中のハプニングにはかなりの対応力が求められる。僕の中でそれは、音楽を作りながら、自分の「聴こえ」と戦っているような気分である。ライブの経験の中で得た僕の聴こえのフィードバックはどこかで活かせないだろうか。ライブの中での自身の聴こえに関する表現方法も今後模索したいと感じた。